FC2ブログ
小説掲載と読んだ本の感想ブログ。
14:カントリーマ○ムよりリッ○派
サイガとでは言葉が通じない。細かい話がわからなくては意味がないし、警戒されても困る。その日はそのまま鞄をしまいこんだ。

翌日、ライエが来た時にさっそく尋ねてみる。ただし、そのままではだめだ。貴族と平民ってどう違うの? という初歩的ぽい質問にしてみた。

「貴族と平民か? 言葉はもちろん違うが――何が違うと聞かれると、困るな」
困ったようにライエは呟いて、口の中にクッキーを放りこんだ。

こちらの世界のクッキーはあまりさくっとしていない。カントリー○アムみたいな感じでしっとりしていて、個人的にあまり好きではない。だから、自然とライエの口に多く入る。育ち盛りだしいいだろう。この世界の13歳は『ライエが訳した13歳』だからわたしにとっての正しく13歳なんだろう……表現がおかしいけどそうなんだろう。
欧米系の13歳はもっと大人びているイメージがあるのだが。それこそ、アメリカのホームコメディなんかだとそう。中学生って結構大人びている。そもそも、わたしが13に見えたくらいだから、本来こっちの世界でも日本人からしたら13歳でも大人っぽいんじゃないだろうか。
だから、ライエの13歳は『日本人から見て13歳に見える13歳』だ。いまいち発育が良くないのかもしれない。毒見が必要だろうし、そういえば江戸時代、7回毒見をしてからご飯を出すので、将軍は冷めてすごくまずいご飯しか食べられないって聞いたことがある。ライエもそうかもしれない。
そういうわけで、積極的にライエが来る時はおやつを用意している。特に注意されないから大丈夫だんだろう。

もう1枚クッキーをかじり口に銜えたまま、わたしのノートに『貴族』『平民』『奴隷』と口に出しながら書く。もちろんこちらの言葉だ。
「ライエ、行儀悪い。こぼさないでよ?」
「む」
慌てて口の中に押し込むとリスみたいな口になった。躾はちゃんとされているので、音を立てて食べたりしないのはいいことだ。
その間に、ライエの手からペンをとって漢字とカタカナでふりがなを振る。うん、ある意味予想はしてたけど奴隷いるんだね。そのあたりは風習だし財産だし、大体地球でも人権なんてものがうまれたのはだいぶあとだから、口に出す気はない。
財産権に口を出したら南北戦争が起こるしね(例:アメリカ)。
「で、この区分わけはなに?」
「貴族は、貴族だ。労働を行わぬ。思考を働かせることは仕事だ。あとは統治することだな」
ニートか。ニートって何?って聞かれそうだし聞かれても困るから何も言わない。
「平民は、労働者だ。大きく分けて農民、職人、商人だ。最近は工業従事者も増えてきている、けど。商人は外国人が多いから、平民とは言い切れない」
工業従事者ってことは、ようするに魔術道具を作る人たちか。本当に地球の工場勤務みたいなイメージでいいのかなあ? 大量生産とはいえ、手工業に近いと思うのだけど。ところが、職人とは違うらしい。
「職人と工業従事者って違うの?」
「? 職人は、代々職人だ。外れ者でもある。工業従事者はもともと農民だったり……平民の大多数だ。全く違うし、職人はむしろ奴隷に近い。特権階級でもあるが」
えたひにんという認識でいいや。わからん。実際に見たらわかるだろう。あれだ、俳人は人に非ず的なノリで。日本は昔から職人の地位が高かったからなあ。韓国や中国では職人の地位は低かったらしいし、そんなもんなんだろう。欧米は知らん。
「奴隷は奴隷だ。あえていうなら異民族が多いな。ヴィラエステルの民は自律心が強い者が多いが、リガータタの向こうにあるサイザードは大きな国だが、従属心が強いものが多く王に向かって拝礼するそうだ。異民族のほうが奴隷向きなのだろう。優秀な者はもちろん、平民になることも可能だしな」
いろいろ突っ込みどころが満載なのだけど、黙って聞いておく。突っ込みは日本語でノートに書いておこう。
アリストテレスかい、と。
「ああ、前にも話したが貴族と平民は話す言葉が違う。貴族は平民の言葉を解し操ることもできるが、平民に貴族の言葉を扱えるものは少ない」
そういえば、わたしが今後追い出された時のために平民語もマスターしなきゃなあと思ったんだった。
げんなりしそう。
「どうかした、か?」
ちょっと顔に出ちゃってたらしい。慌てて笑顔を作って首を振る。
「なんでもないよ。大丈夫。二つも覚えるなんて大変だなあと思っただけ」
「問題ない。ユイは貴族の使う言葉だけ覚えてれば良い。それに、貴族語と平民の言葉はもともと同じ言葉だ。貴族語のほうが複雑故、平民で話せるものは少ないがもとから貴族語を練習しておけば簡単だ」
ラテン語を勉強しておけば、英語もフランス語もお手の物! みたいな。
……最近脳内突っ込みが癖になってきた。口に出すわけにはいかないからなあ。
「……そのうちね。まだ貴族語も難しくて。動詞の語尾変化が20もあるとかあり得ない。主語もないし」
略式ならまだいい。略式は主語があるから、まだ理解可能だ。ところが正式には主語がないものだから、動詞の語尾変化で判断しなければならない。
「それは王族に対するときだけだ。『王を拝する時』の変化形だから、『時を超える者』のユイは必要ないぞ」
「え、本当?」
サイガを振り返ると、眉をひそめてから口を開く。
「正確には、ユイ様は『時を超える者』ではありません。陛下によって召喚された者です。確かに我が国の民ではありませんが、我が国の保護下にある以上、拝謁していただかなければなりません」
「私がいいと言ったから、いいのだ」
「王族は陛下一人ではありません」
「そのうちユイのお披露目を行うのだろう? ならば、その時に『特別』だということにすれば良い。……しないならば、私にしか会わん。なら、必要ない」
色々と重要な情報が出てきました。
ま、ここで記入すると色々とバレそうなので黙って首を傾げるにとどめておく。それより、ライエはわたしに対するときと他の人に対するときとで口調が微妙に違う。いいことなのかわからないけれど、わたしには少し砕けてきたみたいだ。こうやって、他に話せる人がいるといいなと思う。
「まずは簡単なほうがやっぱりありがたいかな? ちゃんとしなきゃいけないのはわかってるんだけど。平民語とは言わないけど、楽なのでお願い」
困り笑顔は日本人の得意技だ。
「なら、やはり通常用からだろう。儀礼用は難しい。貴族語を使っている私でも1年以上かかった」
「ライエでそれくらいならわたしもっとかかっちゃうよ」
「最低限の儀礼用だけ丸暗記してくだされば結構です。他のときまでは言いませんし――大体、普段の時そこまで動詞の活用形についてお出ししておりません。ヤグディルもです」
ん? 普段そんなに厳しくないのは確かだけど、今サイガはヤグディルのことを呼び捨てにした。ファンダレクと呼ばなくていいんだろうか。レイナードの時とは違って……ああもう面倒くさい。教えてもらえるまでいいや。
「ならお願いします。そこは、サイガの裁量に任せるから」
ちなみに、上記二つのセリフはライエによって翻訳されている。申し訳ない。簡単な言葉にすれば話せないことないけれど、ついつい頼ってしまう。
「そのうちレイナードから話がくるはずだ。そんなに遠い話ではないだろう。百人隊長であるサイガが、軍務をこれほど離れている理由がないからな」
またよくわからん役職がでてきたよ。歴史はざざっと流しただけだから、そこまで細かい役職名とかはなかった。結構神話が多かったし。もちろん、人々の宗教観や世界観を知るには重要だった。
「百人隊長?」
「サイガは軍属だ。今は私の護衛――ああ、違うかユイの護衛だな。形式上は私の護衛だが、本来は軍の魔導部に属している。ヤグディルもそうだったか?」
「いえ、今は神職につかれています。そのほうが研究しやすいとのことで」
あーまたわけわからん。ヤグディルのことはまた本人に聞こう。今はサイガの話だ。
「軍は魔法をおもに扱う魔導部と、それ以外の兵部に別れている。軍は治安維持、土木、対外的な護衛とか国境警備とか色々仕事があるんだが――ああ、シェロンいただろう」
「いたね」
あんまり会いたくない相手だが。実際の彼はどうやら気の良い兄ちゃんぽかったが、最初の印象が悪すぎる。ついでに、レイナードと近くて仲良くしたいとも思えない。
「シェロンは、軍団長だ。魔導部と兵部それぞれに将軍がいて、その下に副将が4名いる。その時々で必要な部隊によって変化するな。その下に軍団長。軍団長1人が一師団を持つ。で、その下が百人隊長。基本構成は副将1人につき6人が属する。
以下はバラバラで、一般市民を鍛え上げるのが仕事になるのかな。現状はよく知らん」
お姉さん頭痛くなりそうです。
これ、理解できないふりしておこう。理解できてたら結構危険かもしれない。実際半分くらいしか理解してない。
とりあえず、将軍→副将→軍団長→百人隊長ってのだけわかった。で、魔法を使う軍と剣を使う軍があって、その魔法を使う軍の副将の一人がシェロンで、その下にサイガがついてるのがわかった。
軍が二分されているというのは興味深い。魔導士と魔術師は異なるわけだが、では『魔術師』はどこの軍属になるのだろう。それとも『化学兵器』ならぬ『魔術兵器』は存在しないのか。普通、兵器って最初は扱うのが難しいから専門の技師がいるはずだけど、そういうのはないのかな。
そんなわけはないと思うんだけどなあ。技術革新には戦争がつきものだ。皮肉な話だけれど、地球だって戦争がなければあそこまで発展していない。破壊と創造は表裏一体なのだ。
と格好いいセリフを思いついてみたり。
あー気安く話せないのってストレスがたまる。

しばらく黙っていたので、理解していないと思ったのだろう。ライエはさらに付け足してくれた。
「アウラファータも、軍属だ。でも前王の直属だから、本来は将軍レベルだけど一平卒扱い。でも、レベルがレベルだから扱いにみんな困ってるらしい」
いや、そんな情報言われても。後ろのアウラファータの顔が微妙に困っている。注釈しようかどうか迷っているみたいだ。
情報は欲しいけど、これ以上はこんがらがるので別にいいです。
「ふ、ふうん? ええと、とりあえずシェロンは偉くてそのつぎにサイガが偉くて、魔法が得意なんだ」
めちゃくちゃ端折ってみた。
「そのとおりだ。さすがだな」
さすが扱いされちゃった。
恐る恐るサイガの様子を窺うが、目もとを和ませて「仕方無いですね」みたいな顔をしてくれたのでいいとしよう。
ちょっとずつサイガもわたしに対する警戒心が消えてきているみたいで嬉しい。無表情が読みとれるようになったのも嬉しい。
「ええと、それでわたし、皆にお披露目されるの? 言葉、ちゃんとわかる自信ないよ? そりゃ言わなきゃいけないことは暗記するけどさ」
まさか、王さまがずっと手を握っているわけにはいかないだろう。
強引に話を戻した。
特に何の違和感もなかったようで、ライエはなぜかいっそう目を輝かせて身を乗り出した。
「こ、紅茶危ない……」
ちなみに、紅茶っぽい飲み物は翻訳も『紅茶』だしヤグディルの手紙も『tea』だったので紅茶認定決定だったりする。
「ああ、すまぬ。それより、ユイにプレゼントがあるんだ」
それよりと言われちゃったよ。関連があるのか? 服ではないだろうし、一体なんだ?
あまり高い物だと恐縮してしまうのだけど、王さまからのプレゼントだ。ちょっと興味ある。実際に店行って探すわけもないしなあ。注文したとかかなあ。
何度もだと困るけど、やっぱり最初はわくわくする。

わくわくしてしまったわたしが悪うございました。

ガルシアを呼び、『それ』を持ってくるよう指示を出すのをぼんやり見ていた。だから、入ってきた『それ』を見てもちょっと違和感がある程度だった。
「綺麗だろう? 噂に聞いてたからな、買ってみた。王さま稼業だ、値段は気にするな」

ガルシアに連れられてきた『それ』は。

綺麗な顔をした子供でした。

えええええっ? そんな展開ありですか。



前へ               「羽ばたきの音」目次               次へ

スポンサーサイト



この記事へのコメント
管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
http://potsprite.blog83.fc2.com/tb.php/70-ddfc22a7
文字を大きく・小さく

    FC2カウンター

    最新記事
    カテゴリ
    月別アーカイブ
    プロフィール

    土鍋妖怪

    Author:土鍋妖怪
    生息地:土鍋。
    体長:16cm。
    特徴:本の虫。

    リンク
    拍手
    最新コメント
    最新トラックバック

    メールフォーム

    何かありましたらお気軽にどうぞ。

    名前:
    メール:
    件名:
    本文:

    検索フォーム

    RSSリンクの表示
    ブロとも申請フォーム
    QRコード

    QRコード