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小説掲載と読んだ本の感想ブログ。
22:ミステリアス系美少女万歳
これ以上ないくらいありがちな展開である。

「こんなところでどうしたお嬢ちゃんたち? 恵まれない俺らにも奢ってくださいや」
『――またベタな』
思わず日本語で呟いてしまった。言葉が理解できないことに気づいたらしい、酔っぱらった男の一人がわたしの顔をまじまじと見て、ひゅうっと唇を吹いた。
「珍しいなおい。別大陸の人間か?」
さっきから思っているのだが、わたしの容姿はライエによって変えられていたはずだ。異国人扱いされるのは言葉のせいだとばかり思っていたのだけど――どういうこと? 見た目でもわかるのだろうか。
思わず顔をしかめてライエを見つめるとお上品に口元をナプキンで拭いたライエは「?」と首を傾げた。
ちょうかわいい。
「ライア様、そのナプキンは?」
この辺りにある店の中ではそこそこのレベルとはいえ、ようするにこんな風に絡んでくる連中がいるくらいにはレベルが低い店だ。ライエが気にしないのは偏見がないからだろう。王様として悪くない素質だけど、今はそんなことどうでもいい。
先ほどの店主に教えてもらったこの店は味でいえば当たりで清潔感も悪くない、ただし庶民向け、といった店だった。
ようするに、ナプキンなんておいてない。
「用意してもらったの」
さすがライエです。
当然のように言われたので、もうどうでもよくなって反論するのを止めた。
「俺らは無視か!」
「無視?」
テーブルを大きな音を立てて叩く。典型的な脅しの集団だ。相手をびびらせ、威圧する。確かにちょっと怖いお兄さんたちだが、実際に日本にいたら「すみませんでした!」って言って財布渡してこっそり警察に連絡するところだけど。
ちょっとばかり、わたしも気が大きくなってるなあ。図太くなった気がする。
「私達に何か御用ですか?」
初めてライエは彼らを見つめた。
彼らを自分と相対するにふさわしい人間だと思ってなかったんだろう。素で、空気扱いしていたあたり、どこまでも王様体質だ。
「御用ですよ、可愛らしいお嬢ちゃん? それとも俺らの相手してくれるの?」
「げ、お前ロリコンかよ? いくら可愛くてもちょっと小さいなあ」
「いやいや、この可愛さならOKだね」
「じゃあ俺はこっちの異人ちゃんにしよう。あっちの具合も違うぜきっと」
「こっちもえらい小さいなあ。俺にも後で代わってくれよ」
ちなみに、絡んできている男は4人。
ロリコンがどう訳されたのか気になる。ロリコンなんて言葉あるんだー、と思わず感心してしまった。
もっと話を聞いてみたいところだったけど、失礼なシモネタを発した男にパンを掴もうとしていた手の手首を握られる。
汗っぽくて気持ち悪。ぞわりと悪寒が背筋を走った。

――おとこなんてきらいだ。

「何でしょう?」
嫌悪を隠さずにわたしはつっけんどんに払おうとしたが、ガッチリ掴まれていて放してくれる気配はない。むしろ酒臭い息を吹きかけて、顔を近づけてくる。
「お金ないならさあ、あっちで俺とイイコトしようよ」
「手を離してください」
「いいじゃん、侍女のくせに主人の手を握っちゃてるくせして。あ、もしかして君らデキてる? いいねえ美少女同士」
うぜー。あ、でも美少女扱いなんだとちょっと嬉しい自分が悲しい。
たぶんライエがキレかけてるここは抑えて、と言おうとしたのだが。
「消えろ」
いきなりライエは魔法で炎を出現させ、男の服に火をつけた。
遅かった。わずかな炎だったが、粗末な服は燃えやすい。
「お前ごときが、どうして彼女の手を握る権利がある?」
ライエ、ライエー。口調が戻ってます。
男は叫び声をあげてわたしから離れる。
「うわああああっ!!」
「魔導士か!!」
服の裾に少し火が広がっただけだが、それでも暴れられては火が店の中にまわってしまう。慌ててわたしは傍にあった水入れを頭からかぶせる。いったん火は消えた。
美味しいご飯屋さんに迷惑をかけてはいけない。
即座にわたしたちから距離を置き、何やら危ないものを取り出した男たちと杖っぽいものを出した男。
「てめえっ――」
「小賢し――」
「ライア様、逃げますよ!!」
こんなところで、目立ってたまるか。
どうせ見つかるだろうけど、その時の被害状況はできるだけ軽微なほうがいいのだ。
「弁償はおつりでお願いします!!」
ライエから渡されていた財布から適当に高そうなお金を出して、出がけに店の人に渡す。
「ゆ、ユイ?」
ライエの腕をひっつかんで走る。あれ、何でこんなに早いんだろう?
予想以上に自分の足が軽いことに驚く。日本にいた時より早い。と思う。今まで特に感じてなかったけど、重力でも違うのか。
どっちでもいいけど、好都合だ。考えるのは、あと。少し早くなったって、大の男たちにそう簡単に勝てるわけがない。ライエのこともある。
「ユイ、ちょっと待ってくれっ……げほっ」
「ああああっもう。抱えて走るよ」
「それはできん」
この王様気質め。
いい加減いらっとしてきた。どんどん表情を作る余裕がなくなる。
「ゆ、ユイ……どうかしたか?」

「おいまてお前ら!」
やばい、追いつかれる。
姿を見かけたやつらがすぐそこまで迫っていた。仕方がない、後で謝ることにしよう。
ライエを無理やり抱き抱えて横道にそれた。変な道を通りたくはないのだが、そんなこと言ってられない状況だ。意外と軽い。
「ユイ、走れ――」
「黙りなさい。足手まとい」
あ、つい素が出た。
それでライエは黙ってくれたからいいけど、ああ後でちゃんとフォローしないと。それでも諦めたのだろう、身体からライエの緊張が解けて抱えやすくなった。
じぐざぐに走ると訳が分からなくなる。でも相手はこの町を熟知してるのだろう、追いかける声は一向に遠くならない。もしかしたら、追いつめられてるかもしれない。なぜか身体が軽いとはいえ、ライエを抱えて走るのはやっぱりきつい。米俵とはいえ肩に乗せて走るのは重いのと同じだ。
どうにかして、状況を打破しないと。
「姉ちゃん、大丈夫?」
不意に駆け寄った姿に虚を突かれる。ライエと同じくらいかもっと幼い子供だ。
「大丈夫じゃ、ない」
「追いかけられてるの?」
「何やったの?」
「あ、あいつら俺知ってる。悪い奴らだよ」
わらわらと寄って来た。う、うぜー。こちらはそれどころではないのに。
「追いかけられてる。絡まれた」
ライエが言うと、少年たちはライエの顔を覗き込んで顔を赤くした。ま、見た目美少女だからね。
「よし、じゃあ俺らが助けてやる!」
美少女効果すごい。
「こっちこっち」
「じゃ、俺はあいつらまいてくる」
5人くらいの少年たちが入れ替わり立ち替わり話すからわけがわからない。こっちは割とぎりぎりだ。
「姉ちゃん、こっち来て!」
短い髪で裸足。小汚いけれど、目がきらきらしている。良い目だ。
迷っていても仕方がない。彼らがあいつらの手先ではないとは言い切れないが、現状打破が先決だ。もうもたない。
少年の後を追う。別の少年は何か道具を持って反対方向に走って行った。
「先に、言っておくから」
「門開けといて、先生に言っておいて」
「りょうーかい!」
何が何だかわからない。それでも少年の後を追う。
じぐざぐの迷路のような道を走り、少年はいきなり角を曲がった。
「えっ」

「――こっち」

不意に声がした。
顔をあげようとした瞬間、わたしの腕を冷たい手がつかむ。何かを認識する前に、わたしはその手に引っ張り込まれた。
「っっ」
門があった。手に引きずられてその中に入った途端に門が閉まる。

同時に、外を大きな音を立てて走りぬける音がした。声からするに、わたしたちを追っていた奴らだ。近くまで、追いつめられていたのか。小さく嘆息してライエから手を離す。
「……ごめん」
ああ、下手したら極刑ものだ。どうにかそれは避けたい。ライエの顔が見れない。
「大丈夫。――ユアンは、悪くないもの」

あれ、演技モード?
「何があったかは知りませんが、あいつらに追いかけられるとは災難でしたね。ここには入れませんから、安心してください」
振り返ると、髪を束ねた美少女。品の良い服装と洗練された動きが育ちの良さを感じさせる。
何を考えているかはわからない。深い青色の瞳がわたしたちを覗きこんでいた。澄んだ瞳。
やばい。
やばい、好みだ。某使徒と戦う短髪の美少女や某文学部所属宇宙人が好きな人なら、きっとクリティカルヒット。ミステリアス系美少女っていいよね! ツンデレとミステリアスは永遠のヒロインポジション。わたしはミステリアス派です。ときめきがとまらない。
じゃなくてですね。
「ありがとうございます。助かりました」
わたしがお礼を言うと、少しばかり表情を崩した。人形のようだった印象が柔らかくなる。
「外国の方ですね。子供たちから聞いています。よろしければ、彼らのほとぼりが冷めるまでこちらにいらしてください」
……おおっとどうしたらいいかわからないぞ。困っていると、ライエがすっと立ち上がった優雅な礼をした。
それって淑女の礼ってやつだよね? なんでライエができるのさ。
少しばかり変えてあるとはいえ自分の容貌をしっかりと認識しているのだろう、微笑みを浮かべる。
「ありがとう。貴族語は話せますよね?」
なんで断定的なんだ。
「――ええ。話せます」
へえ、平民も貴族語って喋れるもんなんだ? しかしライエ翻訳がかかると平民語も貴族語も一緒に聞こえるから困る。
「でしたら、そちらでお願いします。私の我儘でこちらまで来てしまいましたが、彼女は平民語が理解できません」
「かしこまりました。では、こちらへどうぞ」
えー。そんなもんなの?
それとも、ライエのオーラか?
困っていると、ライエがわたしの腕に軽く触れた。
「大丈夫」
安心させるように笑ってくれ、そのまま謎の美少女の後をついていく。
何が大丈夫なんだ。
外に出るわけにもいかないし、慌てて2人の後を追った。
……シロ、ちゃんと迎えを連れてきてくれるかなあ。


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